壮大なスケールの白河の踊り
H・アール・カオス「カルミナ・ブラーナ」
 (週刊オン・ステージ新聞 2002/12/13)

 『カルミナ・ブラーナ』は、わが国でも大変人気があり、数多くの舞踊団によって取り上げられてきたが、残念ながら再演に値するような傑作は生まれていないといっていい。大人数を舞台に上げてもなお、曲の持つ迫力に負けたという例が多いが、H・アール・カオスはたった七人のダンサーで舞台を充溢させる。いや愛知県芸術劇場大ホールの大きな舞台を、白河直子はそのスケールの大きな踊りで満たしてしまう。オーケストラ、独唱、合唱は生演奏だが、PAで拡大されて大劇場をみたす。エネルギッシュなダンスはその大音響にも負けない。
髪振り乱し、引きちぎれんばかりに手足を振り回し、空中に放り出すという、このカンパニー独特のスタイルについては好き嫌いがあるだろうが、バレエで鍛えられた剃刀のような肉体のみが創出しうる迫力だと痛感する。
有名な第一曲が始まると同時に、白河がエンジン全開で踊り、観客を一気に異界へと連れ去る。酒場の場面(ダンサーたちが口から酒をぷーっと霧にして吹き出す)を経て終幕にいたるまで、人間の雑多な生を讃える。
演出振付の大島早紀子は、舞台の各所に歌手を出没させ、また、この劇場がそなえる最新鋭の装置を駆使し、現代と中世、生と死が共存する希有壮大な舞台を創出した。『神々を創る機械』ですでに用いられた中世の修道院の回廊を思わせる装置が、さらに効果的に用いられ、終幕の、舞台後方から投射される鮮烈なサーチライトが白河のシルエットを浮かび上がらせる場面では、観客を恍惚とさせた。つねに死と再生を語ってきた大島が、生を正面から見据えて、飛躍的に大きくなった。
愛知県文化情報センターの創立十周年記念公演である。同センターの学芸員であり舞踊学者である唐津絵里は、九九年にもH・アール・カオスとオーケストラの競演による『春の祭典』を成功させたが、今回もそのときに劣らぬ大成功をおさめ、観客を総立ちにさせた。(11月6日)