ダイナミックな独自の世界
勅使川原三郎「Bones in Pages」
(日経新聞 2005/9/22)

 勅使川原三郎はたんなるダンサー・振付家ではない。美術も音楽も照明も衣裳もすべて自分の手で創り出し、そのなかにダンサーとしての自分の身体を置いて、ユニークな世界を創出する。
 むろんその中心にあるのは彼の身体とそこから立ち現れるダンスだ。そのダンスは、他に類を見ないほど細かく分節されている。そこが、伝統的なステップを組み替えただけの、大方のコンテンポラリー・ダンスとの差だ。だがそれだけならば、他人には真似のできない名人芸で終わってしまうが、勅使川原は早くから教育法を探求し、バレエ・ダンサーや視覚障害者に自分の世界を伝えてきた。
 舞台下手の壁には、大きく開かれた本のようなオブジェがびっしりと並び、後方にも本が積まれ、上手の床は革靴で埋め尽くされている。中央には透明なパーティションがあり、二組のテーブルと椅子。そしてパーティションの上を生きたカラスが歩き回っている。
 下手の壁際に置かれたテーブルを、スポットライトが闇の中から浮かび上がらせる。テーブルの上にはガラスの破片が林立し、そのそばに肌色の風船のような奇怪なオブジェ。
 やがてそのオブジェがゆっくりと上昇し、勅使川原の頭部であったことが判明する。彼が指先を細かく痙攣させると、その振動は増幅されながら全身へと拡散していき、ダイナミックで、アナーキーな、だが同時に微分的な、独特なダンスを現出させる。
 彼は立ち上がり、限られた空間で、ノイズ的な音響にのって、文字通り体の全部分を使って踊っては、また壁際に戻ってうずくまる。後半には勅使川原の分身である二人のダンサーが奥と上手にあらわれて、激しいダンスで空間を切り裂く。十四年前に初演されたソロ作品の改訂版だが、その独自性を乗り越える者はまだ出ていない。9月10日、神奈川県立青少年センター。