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自己主張を貫く熊川哲也
Kバレエカンパニー「ドン・キホーテ」
(日経新聞 2004/12/2)
Kバレエカンパニーを率いる熊川哲也はこれまで「白鳥の湖」をはじめ、古典バレエの数々を上演してきたが、古典バレエではつねに女性が主人公なので、男性の出る幕があまりない。その点、「ドン・キホーテ」は例外的に、男性主人公の踊りがたっぷり見られるので、ファンたちも大満足だったにちがいない。
実際、彼の跳躍も回転も衰えを知らず、「空飛ぶダンサー」ぶりは健在だ。それどころか、踊りがますます深みを増している。
舞台はバルセロナ。旅籠の娘キトリは理髪師のバジルと相思相愛の仲だが、父はキトリを金森のガマーシュと結婚させたいと思っている。そうした恋愛ドタバタ劇に、遍歴途中のドン・キホーテがからむ。肩の凝らない、愉しいバレエだ。
熊川はこれまで古典に、かならず独自の解釈と振付をほどこしてきた。そこには、「当たり前のものは作りたくない。しかし無理やり奇抜なものを作りたくもない」という強靭な意志が一貫して見られた。
今回の演出振付は、今春好評を博した「コッペリア」ほど大胆ではなく、彼が踊り慣れているバリシニコフ版の影響が強く見られるため、一見するとオーソドックス。しかし目立たない形で男性の踊りを増やしているし、指揮の福田一雄の助けを得て、ふつうとはずいぶん違う曲を用いており、自己主張を貫いている。主役をトリプル・キャストにしたことからも感じられるように、芸術監督、つまり演出家・振付家としての仕事も軌道に乗ったとみていいだろう。
熊川が主役を踊った日に見た。花売り娘役の康村和恵が息を呑むようなソロを見せたが、キトリ役の荒井祐子に輝きが感じられなかったのが残念。11月17日、オーチャードホール。
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