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郷愁誘う永遠に続く営み
ピナ・バウシュ ブッパタール舞踊団
(日経新聞 2003/12/1)
世界中でチケット入手が一番困難だといわれているカンパニーだ。日本にも熱狂的なファンが多い。今回の演目は、昨年、本拠地であるドイツのヴッパタール市で初演した新作「過去と現在と未来の子どもたちのために」。
ピナ・バウシュがヴッパタール舞踊団の芸術監督に就任してから三〇年経つ。『カフェ・ミュラー』や『春の祭典』など、初期作品には、開いた傷口から血が流れ出ているような鋭い「痛み」を感じさせるものが多かったが、最近の作品には、(手垢にまみれた表現を使いたくはないのだが)やはり「癒し」という言葉がふさわしい。
だが「タンツテアター(ダンスシアター)」と呼ばれるその様式は変わっていない。それは「演劇的ダンス」でもなければ「ダンスによる演劇」でもなく、ストーリーらしきものはない。いやそれどころか、今回の作品では、なんらかのメッセージや意味を見出すことは困難だ。
上演時間は三時間近くに及ぶが、あと三時間続いたとしても観客は違和感をおぼえないだろう。ちゃんとオープニングもフィナーレもあるのだが、永遠に続く営みを三時間だけ切り取った、という感じがしてならない。けだるいボサノヴァ調、あるいはタンゴ調の曲が次々に流れるなか、短いシークエンスが数珠繋ぎになる。
独断かもしれないが、初期作品以来、ピナ・バウシュの一貫したテーマは愛とそれがもたらす哀しみだ。舞台上ではダンサーたちがさまざまな組み合わせによって抱擁し合う、あるいは抱擁しようとしながらすれ違う。その抱擁は成熟した男女のそれであると同時に、その原型としての、乳児と母親の抱擁でもある。だから見ている私たちは強烈な郷愁をそそられる。
これまでの作品同様、舞台ではダンサーたちが子どもの遊びに耽るのだが、一時期ほとんど姿を消していた、いわゆる「ダンス」的な動きが増え、そのおかげでますます眼に快いものになっている。11月14日、新宿文化センター。
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