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シュツットガルト・バレエ団/ロミオとジュリエット
(日経新聞 2002/2/14)
プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』は、バレエ音楽の最高傑作である。数多くの振付家が独自の版を創作してきたが、八年ぶりに来日したシュツッツガルト・バレエ団が上演したのは、一九六〇年代に同バレエ団を世界有数のカンパニーに育て上げ、その後急死したジョン・クランコによる版(以下、ク版)。世界的に一番人気のあるマクミラン版(以下、マ版)に比べて上演回数の少ないク版が観られる貴重な機会となった。イゾルト・ランドヴェとウラジーミル・マラーホフ、スージン・カンとロバート・テューズリー、両方のペアを観た。
ク版もマ版も傑作であり、甲乙つけがたい。興味深い相違もたくさんあるが、根本的な違いだけに触れてみよう。マ版は全体がロマンティック・リアリズムともいうべきスタイル一色に染め上げられているのに対し、ク版ではあちこちで民衆的エネルギーが噴出する。マ版のダンスはつねに華美流麗だが、ク版は感情の迸りを表現する仕草によって流れをあえて切断する。マ版の滑るような足さばきに対し、ク版では跳ねたり床を踏んだりするダンスが優勢だ。最も異なるのはこのバレエの核心ともいうべき主人公たちのパ・ド・ドゥである。マ版では女性は美しくか弱い、人形のような存在であり、ひたすら全身を男性に委ねる。だからかすかに性差別の匂いがするが、ク版では、たとえ男性にリフトされていようとも、女性は自分の意志を持ち、自己主張をし、男性と対話する。だからシェイクスピアの原作と同様、ク版では終始ジュリエットのほうが恋をリードする。
ランドヴェ、テューズリーも素晴らしかったが、韓国出身のスージン・カンの芯のある踊りと迫真の演技には心打たれた。当代随一のバレエダンサーといわれるマラーホフについては、ナルシスぶりが鼻につくという人もいるようだが、今回は驚くほど抑制された名演技でファンを倍増させたにちがいない。同バレエ団の元芸術監督マリシア・ハイデが存在感のあるキャピュレット夫人を演じたことも付記しておきたい。
5-7日、東京文化会館。
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