牧阿佐美バレエ団/デューク・エリントン・バレエ
(日経新聞 01/8/6)

 ローラン・プティは、モーリス・ベジャールと並び、二〇世紀バレエ史上最も重要な振付家である。彼は一九五〇年代にハリウッドで仕事をし、ダニーケイの『アンデルセン物語』やフレッド・アステアの『足長おじさん』の振付をしているが、ショー・ダンスを取り入れることによって、現代バレエの表現力を大幅に広げた功績は大きい。
 そのプティがジャズの巨匠に取り組んだ、全二幕十七場という大規模な作品である。ジャズ・ファンならば誰もが知っている「ソフィスティケーテッド・レディ」「サテン・ドール」など、二〇曲以上使われているが、すべて一九五〇、六〇年代の録音を用いており(エリントンの語りや拍手が入っている)、プティのこだわりが感じられる。
 ソロ、デュエット、トリオ、群舞など、暗転するたびに雰囲気ががらりと変わる。じつは観る前、もっと軽いショーパブ的なものを想像していたのだが、じつにおしゃれでありながら、同時に、伝統的なステップを排して、細部細部に新たなバレエ表現の試みが見られ、その点で本格的な現代バレエ作品である。レパートリーとして定着させてほしいものである。
 世界的な建築家ジャン=ミシェル・ビルモットによる幾何学的な装置はまことに斬新で、舞台の奥行きをフルに利用している。
 振付は、ある部分ではバレエ寄り、またある部分ではジャズ・ダンス寄り。前者では、ダンサーたちはプティのじつに複雑で細かい振付をよくこなしていた。日本の他のバレエ団では、こうはいかないだろう。だが後者になると、上半身や腰の固さが災いして、いまひとつ「スイング」せず、ゲストの外国人ダンサーたちとの差が目立った。
 ゲストの中では、プティの片腕的存在であるルイジ・ボニーノの卓抜した演技力が印象的。熊川哲也と並び現代日本の男性ダンサーのトップの座にある小嶋直也は、今回も大車輪の活躍。じつによく跳び、よく回る。また、菊地研という新しいスターが誕生したことを書き添えておくべきだろう。26日、新国立劇場。