伊藤キム・山崎広太公演
(日経新聞 01/3/15)

 現代舞踊に関する限り、新国立劇場はオープン当初、現代舞踊界の「大御所」たちの作品を年功序列的に上演し、おかげで観客の足が遠のいてしまったが、若手に順番がまわってくるようになって、活気が出てきた。
伊藤も山崎も、ともに九〇年代半ばにデビューし、いまやコンテンポラリー・ダンス界の中心的存在。
前半の伊藤の「クローズ ・ザ・ドアー、オープン・ユア・マウス」では、三方の壁と天井に囲まれた、大きな部屋で、音楽家たち(チェンバロと弦楽四重奏)に、ダンサーたちが絡む。二人の外国人男性ダンサーの動きはじつにのびやか。と、高い澄んだ歌声が舞台に響きわたり、ダンサーは歌わないという私たちの固定観念を粉砕する。じつは彼らはカウンターテナーの歌手でもあるのだ。
やがて伊藤キムが登場し、彼らしいコミックなダンスで観客の笑いを誘うが、今回は、伊藤の作風が全体を染めることはなく、むしろ音楽家と歌うダンサーというユニークな素材に大いに「歌わせて」いる。
 後半の山崎の「ハイパーバラッド」は、建築家の伊藤豊雄が美術を担当している。舞台後方は半円形の銀幕、床はアルミニウムだ。そのがらんどうの空間で、山崎自身を含め、十三人のダンサーが超高速のダンスを繰り広げる。ダンサーのなかには、木佐貫邦子のようなベテランや、クラシック・バレエの島田衣子が混じっている。山崎のダンスのスタイルは、まさにハイパーアクティヴ。
これまで山崎の振付の評価は彼自身のダンスへの評価に比べると低かったが、今回は「合わせたり、ずらしたり」という構成に腐心していることがよくわかった。
「コンテンポラリー・ダンスは難解でつまらないのでは」という不安を抱いていた観客も、「ダンスって、めちゃ面白い」という感想を抱いたにちがいない。11日、新国立劇場。