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超絶技巧に漂う気品/ホセ・カレーニョとラテンの旋風
(日経新聞 2000/2/29)
カレーニョの名を知らぬ人はサルサかタンゴの公演かと思うかもしれないが、バレエの公演である。
『白鳥の湖』『ジゼル』『ドン・キホーテ』『海賊』といった有名バレエからのパ・ド・ドゥや「アルレキナーダ」「ディアナとアクティオン」といった有名小品に、ローラン・プティの作品を加えたプログラム。と書くと、凡百のバレエ・コンサートみたいだが、変わっている点は、アメリカとイタリアからのゲスト三人を除いて、あとは全員ラテン・アメリカとスペイン出身のダンサーだということである。
じつはここ数年、中南米は優れたバレエダンサーを続々輩出し、その小麦色の肌をしたダンサーたちが世界の一流バレエ団で活躍しているのである。これは、日本から見れば地球の裏側で、バレエの伝統が定着し、優れた舞踊教育がなされいることを物語っている。
彼らはいずれ劣らぬ超テクニシャンだが、その回転も跳躍もじつに軽やかで、「ヨーロッパの伝統の重みを背負っていないせいか」と勝手な推測がしたくなるほどだ。しかもその軽やかで清々しい超絶技巧の中には、その肌の色から連想される野性味よりむしろ、なんともいえぬ気品が漂っており、跳躍の高さとか回転の速さや数といった「量」が、品や美という「質」に転化するのを私たちは目の当たりにし、芸術は技術に内在するのだということを再認識させられる。
本公演の座長であるカレーニョ、彼のパートナーをつとめたパロマ・ヘレーラ(いまやアメリカンバレエシアターで、アナニアシビリと並ぶ看板バレリーナ)、三年前に世界バレエ・フェスティバルで満場を陶然とさせたフェルナンダ・タヴァレス=ディニス、ちょっと癖があるが要所要所で見事な静止ポーズを決めるロルナ・フェイホらによって踊られると、見慣れた古典作品が数段パワーアップして見える。
脇役として東京バレエ団の女性ダンサーたちが登場する演目があった。彼女たちは技術的にきわめて優れているのだが、ラテン系ダンサーたちのような存在感に欠け(舞踊教育の違いなのか)、ピザの後に緑茶を出されたみたいな違和感が残った。ABCのうちAプロ。23日、簡易保険ホール。
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