日本人の季節感を描く/東京バレエ団「ノイマイヤー新作公演」

(日経新聞 2000年2月10日)

 東京バレエ団が、ジョン・ノイマイヤーの二作品を上演した。ノイマイヤーはアメリカ出身だが、三十年近くドイツのハンブルク・バレエの芸術監督をつとめている。現代バレエを牽引してきた名振付家のひとりである。彼の作風は幅広いが、この日の一作目『スプリング・アンド・フォール(春と秋、跳躍と落下)』は抽象バレエ。抽象バレエでは、ダンサーたちの身体が形式という鎧に閉じ込められてしまいがちだが、ノイマイヤーのダンサーたちは音楽に乗って、じつに楽しそうに踊る。笑みを絶やさず素晴らしくのびやかな踊りを見せた首藤康之が、形式は後から出来上がるのだという振付家の意図を十二分に体現していた。
 世界初演された新作『時節(とき)の色』は、十年前にやはり東京バレエ団のために振り付けた『月に寄せる七つの俳句』と同じく、音楽でいえば標題音楽に相当する作品。ヴィヴァルディ、シューベルト、ドビュッシー、三木稔、湯浅譲二の、季節をテーマにした音楽を用いて、日本の四季、日本人の季節感を描く。
 といっても日本の風物が描写されるわけではなく、ノイマイヤーの抱く日本のイメージが抽象的に表現されていく。季節の移ろいを表現する男女の群舞が、短い曲の交替とともに、ときに躍動的に、ときに静謐に繰り広げられ、そのなかを山高帽をかぶった放浪者ふうの男(高岸直樹)が旅していく。時折、「永遠に女性なるもの」を体現しているとおぼしき女(斎藤友佳理)があらわれ、男と緩慢流麗なパ・ド・ドゥを踊る。
 クラシック・バレエが根底にありながら、全般に「歩く」(しかも能のように摺り足で)ことが重要なダンスの要素になっていることによって表現の幅が格段に拡大している。短い小景が交替し、ドラマティックな展開やクライマックスがないことも、ノイマイヤーの日本観にもとづいた構成だろう。まるで俳句が並べられているようなのだ。5日、簡易保険ホール