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バレエ、ダンス、舞踏・・・ジャンル超えた踊り期待/田中泯「春の祭典」
(新潟日報 1998/12/2)
イーゴリ・ストラヴィンスキーの「春の祭典」が二十世紀音楽を代表する名曲であることに異議を申し立てる人は恐らくいないであろう。
この曲はもともとバレエ音楽であり、一九一三年にパリのシャンゼリゼ劇場で、セルゲイ・ディアギレフの率いる「バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)」によって初演されたが、その晩、劇場は怒号と悲鳴のるつぼと化した、と歴史書にはある。
その理由は単純で、まず第一に、この名作も当時の聴衆には雑音にしか聞こえなかったのである。それもそのはず、この曲は西洋音楽の伝統と絶縁した革命的な作品である。
第二に、この曲に乗って上演されたダンスもまた曲に劣らず、革命的なものであった。振り付けたのは、悲劇的な生涯を送った真の天才ヴァーツラフ・ニジンスキー。アン・ドゥオール(開脚)、垂直志向、上昇志向を根本とする伝統的なバレエを期待していた観客に対し、ニジンスキーの振付は内股(また)で猫背で首をかしげ、足をどんどんと踏みならすというようなもので、恐怖感すら与えたのだった。
さまざまな理由からニジンスキーの振付はすぐに人びとの記憶から消えてしまったが、モーリス・ベジャールやピナ・バウシュ、マーサ・グレアムら実に大勢のコレオグラファー(振付家)たちがこの曲を用いて自分なりの作品を発表してきた。その数は百以上に達するといわれる。コレオグラファーたちにとって、「春の祭典」は、挑戦せずにはいられなくなる「誘惑の声」であるらしい。
来年一月、田中泯がロシアとは縁浅からぬ新潟で、ロシア人ダンサーたちを使って「春の祭典」を上演する。田中はここ数年、アメリカ、ブラジル、ノルウェーなどのダンサーたちと共同作業を行い、舞踏の新しい可能性を生み出した。
その田中が、反西洋的なスラブ風の旋律を持ち、非常に“ロシア的”な作品といえる「春の祭典」の舞台を、スラブ民族の血を受け継ぐダンサーたちとどのようにつくりあげるか、非常に興味深い。
しかも田中は、上昇・垂直・開放を本質とする西洋のダンスに対し、内股で身体を沈めて踊る舞踏を独自のスタイルとして確立した土方巽、大野一雄らとは一線を画しつつも、常に日本の「舞踏」の最前線で仕事をしてきた舞踏家、コレオグラファーである。
常に様式化を拒むような踊りを見せてきた田中だけに、舞踏の遠い祖先ともいえるニジンスキーがバレエという伝統の枠の外へ大きく跳躍したように、今公演はバレエ、ダンス、舞踏といったジャンル分けを超越した作品になるに違いない。
そういう意味でも今度の公演は見逃せない。
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