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美しい木立の魔法/第8回清里フィールドバレエ・コンサート
(ダンスマガジン 1997/11)
野外パフォーマンスは私たちを妙に興奮させる。『失楽園』のカップルも薪能をみて心身ともに燃え上がった。『失楽園』とは無縁の私は家族連れで清里の「フィールドバレエ・コンサート」を見に行った。劇場舞台という閉鎖空間に慣れきっている私の眼には、夜空の下でのバレエはじつに新鮮で、大げさでなく眼から鱗が落ちる思いがした。
八年前に始まったときには一回公演だったそうだが、今年は十二日間連続公演。プログラムは、A(『シンデレラ』全幕)、B(『ライモンダ』第三幕ほか)、C(『くるみ割り人形』第二幕ほか)の三つで、私は8月6、7日にA、Cをみた。出演は演出・振付・主演の今村博明・川口ゆり子をはじめ、二人の主宰するユースバレエ・シャンブルウエストと、地元の船木洋子バレエスクール。
夏に清里で野外バレエの公演があることは前から知っていたが、(1)清里には少女趣味の安っぽいペンションが乱立し、キャピキャピ・ギャルが溢れているらしいから、近寄りたくない、(2)そんな行楽地の公演だからしろうと向けの薄っぺらなバレエ公演だろう、(3)野外だから設備に問題があって大がかりな公演はできないだろう、と勝手に考えて、これまで足が向かなかった。だが実際に行ってみて、(1)(2)(3)がいずれも浅はかな偏見であることを思い知った。(1)たしかに清里駅前は悪趣味の極致だし、少女趣味のペンションもあるが、野外バレエの会場である萌木の村はしっかりしたポリシーにもとづいた本物のリゾート村だし、(2)レベルの高い本格的なバレエ公演であるし、(3)設備に問題があるどころか、劇場では絶対に味わえない独特の舞台効果が味わえた。
舞台は本物の木立に囲まれていて、昨年は『ジゼル』が上演されたそうだが、さぞかし美しかったろう。『シンデレラ』でも、最初の室内の場では衝立が背景を隠していて、妖精の女王が四季の精を呼び集めるとたちまち舞台は木立に囲まれ、舞台後方の下方から天に向けて色とりどりの光線が放たれる。この魔法の場の光による演出の美しさには思わず息を呑んだ。
その『シンデレラ』は三幕をうまく二幕にまとめていて、王子のシンデレラ探しがスピーディでよい。今村の王子と川口のシンデレラは息がぴったりと合っており、振付の細部にはかなり斬新なテクニックが盛り込まれていて感心した。難をいえば、いささか息が合いすぎて、初対面の王子とシンデレラがたがいに胸をときめかす場面などが今ひとつ感じが出ていない。
バレエ・コンサートは、新作『ホワイトスクランブル』、『サタネラ』と『レ・シルフィード』のパ・ド・ドゥと続いて、休憩をはさんで後半は『くるみ割り人形』第二幕。この演目は自動演奏オルガン(要するに巨大なオルゴール)の演奏による。これは世界で唯一の試みだそうだ。チャレンジ精神は認めるが、音色が限られているのでかならずしも効果を上げているとはいいがたい。
特筆すべきはコール・ド・バレエの質が高いこと。吉本泰久、永井とも子、船木城といった若手はのびのびとよく踊っていて今後の成長が楽しみだが、ソリスト群が全体に弱い。中堅ソリストの充実が今後の課題だろう。
毎夜一千人近くの観客を集め、その半分以上が地元の人だという。各地で音楽祭・演劇祭が盛んだが、地元にこれほどしっかりと根を下ろした催しは珍しい。プロデューサーの船木上次氏の長年の努力が着実に実を結んでいるとみた。
野外パフォーマンスは私たちを妙に興奮させる。『失楽園』のカップルも薪能をみて心身ともに燃え上がった。『失楽園』とは無縁の私は家族連れで清里の「フィールドバレエ・コンサート」を見に行った。劇場舞台という閉鎖空間に慣れきっている私の眼には、夜空の下でのバレエはじつに新鮮で、大げさでなく眼から鱗が落ちる思いがした。
八年前に始まったときには一回公演だったそうだが、今年は十二日間連続公演。プログラムは、A(『シンデレラ』全幕)、B(『ライモンダ』第三幕ほか)、C(『くるみ割り人形』第二幕ほか)の三つで、私は8月6、7日にA、Cをみた。出演は演出・振付・主演の今村博明・川口ゆり子をはじめ、二人の主宰するユースバレエ・シャンブルウエストと、地元の船木洋子バレエスクール。
夏に清里で野外バレエの公演があることは前から知っていたが、(1)清里には少女趣味の安っぽいペンションが乱立し、キャピキャピ・ギャルが溢れているらしいから、近寄りたくない、(2)そんな行楽地の公演だからしろうと向けの薄っぺらなバレエ公演だろう、(3)野外だから設備に問題があって大がかりな公演はできないだろう、と勝手に考えて、これまで足が向かなかった。だが実際に行ってみて、(1)(2)(3)がいずれも浅はかな偏見であることを思い知った。(1)たしかに清里駅前は悪趣味の極致だし、少女趣味のペンションもあるが、野外バレエの会場である萌木の村はしっかりしたポリシーにもとづいた本物のリゾート村だし、(2)レベルの高い本格的なバレエ公演であるし、(3)設備に問題があるどころか、劇場では絶対に味わえない独特の舞台効果が味わえた。
舞台は本物の木立に囲まれていて、昨年は『ジゼル』が上演されたそうだが、さぞかし美しかったろう。『シンデレラ』でも、最初の室内の場では衝立が背景を隠していて、妖精の女王が四季の精を呼び集めるとたちまち舞台は木立に囲まれ、舞台後方の下方から天に向けて色とりどりの光線が放たれる。この魔法の場の光による演出の美しさには思わず息を呑んだ。
その『シンデレラ』は三幕をうまく二幕にまとめていて、王子のシンデレラ探しがスピーディでよい。今村の王子と川口のシンデレラは息がぴったりと合っており、振付の細部にはかなり斬新なテクニックが盛り込まれていて感心した。難をいえば、いささか息が合いすぎて、初対面の王子とシンデレラがたがいに胸をときめかす場面などが今ひとつ感じが出ていない。
バレエ・コンサートは、新作『ホワイトスクランブル』、『サタネラ』と『レ・シルフィード』のパ・ド・ドゥと続いて、休憩をはさんで後半は『くるみ割り人形』第二幕。この演目は自動演奏オルガン(要するに巨大なオルゴール)の演奏による。これは世界で唯一の試みだそうだ。チャレンジ精神は認めるが、音色が限られているのでかならずしも効果を上げているとはいいがたい。
特筆すべきはコール・ド・バレエの質が高いこと。吉本泰久、永井とも子、船木城といった若手はのびのびとよく踊っていて今後の成長が楽しみだが、ソリスト群が全体に弱い。中堅ソリストの充実が今後の課題だろう。
毎夜一千人近くの観客を集め、その半分以上が地元の人だという。各地で音楽祭・演劇祭が盛んだが、地元にこれほどしっかりと根を下ろした催しは珍しい。プロデューサーの船木上次氏の長年の努力が着実に実を結んでいるとみた。
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