「バフチサライ」はロシアではポピュラーな演目だが、日本では見る機会が少ない。法村・友井、佐々木美智子など、この作品をレパートリーにしている関西のバレエ団はあるが、関東、というか東京のバレエ団はやらない。大昔、松山バレエ団のレパートリーだったらしいが、私は観たことがない。
この作品を上演する際のいちばんの問題点は、男性が多数必要だということである。韃靼人兵士の役である。今回の公演では、芝居畑の若者が40人以上出演し、終幕は恐ろしく迫力のあるものになった。
いや、全体に非常にレベルが高く、名古屋まで行った甲斐があった。
韃靼軍隊長ヌラリは佐々木大。彼が王子をやると、ちょっとくすぐったくなるが、この役はぴったり。あの体の柔らかさを生かして、思う存分踊っていた。
マリアの婚約者ワズラフはキーロフのアンドレイ・ヤコブレフ。この役は一幕で殺されてしまう。ヤコブレフは早くも中年太り。
ギレイ汗は同じくキーロフのヴラジーミル・カラシコ。2メートル近い大男であるが、内面的な演技が胸を打った。
マリアは矢頭早弓。レニングラード国立のダンサーだが、光藍社との契約により、日本公演には出演できないのだそうだ。大役を立派にこなしていた。
ザレマは韓国ユニバーサル・バレエのプリマ、イム・ヘギョン。身長1701センチ。手足がすらりと長い美人である。いやあ、見惚れてしまった。
松本道子さんというのも、若いときはさぞかし可愛かったにちがいない。ちなみに、ご主人で、演出の藤田彰彦さんは歌手の尾崎紀世彦のお兄さんである。
「バフチサライ」というと、1994年のマリインスキー(キーロフ)のロンドン公演を思い出す。他の配役は忘れてしまったが、ザレマは特別ゲストのシルヴィ・ギエムだった。ギエムの「バフチサライ」を観た日本人はそう多くないはずだ。