年末になると、毎日のように「くるみ」が上演される。いや一日に同時に何カ所かで上演されてさえいる。それを全部観ることはできないし、観たいとも思わない。
というわけで、例年、ほんのいくつかしか観ない。今年は、札幌舞踊会、鈴木和子バレエアカデミー、貞松・浜田バレエ団、そして松山バレエ団の4つだ。下村由理恵をみるために小林紀子バレエシアターにも行くつもりだったのだが、急な仕事が入って、行けなかった。
松山の「くるみ」だけは、ほぼ毎年かならず観る。山川晶子を観た年もあるが、それ以外はいつも森下洋子の日だ。彼女のクララは何度みてもいい。
そのわざとらしい演技は好きではないが、踊りはやっぱり絶品だ。細かいところまで神経がゆきわたっているのがよくわかる。とにかく丁寧に踊る。
最後のグランパも見事だった。清水哲太郎のほうは確実に限界に近づいているが、でも、洋子さんが踊り続ける限り、哲太郎さんにも踊り続けてもらいたいと思う。べつにジャンプできなくとも、足があがらなくなっても、いいではないか。あの気品は、余人をもって代え難い。
松山版「くるみ」の第一幕は好きでない。舞台に大勢出過ぎるし(満員電車みたいに混雑している)、踊りが細かすぎる(「あっち向いて、ほい」みたいな振りも好きでない)。足音が耳障りだ。
他のバレエ団では見られないのは、「眠れる森の美女」の間奏曲をつかった、クララと王子の「別れのパ・ド・ドゥ」だ。ちょうどロミオとジュリエットの朝のパ・ド・ドゥみたいな、せつないパ・ド・ドゥである。