昨年初演された作品の再演。私は今回が初めてである。
テレビで映画『オルフェ』を観たのは小学校の3年か4年のときだった。妻を見ては行けないのに、車のバックミラーに映った妻の姿を見てしまう、というシーンが印象的だった。
しかし私は何事につけオクテであったから、『恐るべき子どもたち』や『ドルジェル伯の舞踏会』を読んだのは大学に入ってからのことであった。三島由紀夫との関連から、コクトーやラディゲに関心が向かったのであろう。
『堕天使の恋』は、まず台本がしっかりしている。チラシをみると、山崎洋子作とある。なるほど。父親の自殺がコクトーにとって深いトラウマになったという解釈である。
ラディゲの死の場面から始まる。その晩、コクトーは錯乱状態に陥り、医者にモルヒネを打たれ、夢うつつの中で精神的遍歴を回想する、という筋立てである。
いやあ、よく出来たダンス・ミュージカルである。後方に小編成のバンドが配置され、舞台装置は最小限だ。
医者や父親をベテランの松橋登が演じている。台詞を話すのは彼だけである。さすが、うまい。この人の舞台は若い頃にずいぶん観た。神経を病んでいる人間を演じると抜群であった。
島田衣子がすばらしい。前から書いているように、彼女はタダモノではない。小柄だが、その踊りはじつにダイナミックだし、天性の演技力がある。そのために圧倒的な存在感がある。
西島千博、山本隆之、金森穣らを見ていて、いまや日本にもこんなにスタイルのいい、しかもハンサムなダンサーが何人もいるのだなあと感動してしまった。
その男性陣の中では、やはり山本隆之、金森穣のダイナミックな踊りが目を惹いた。山本はロベール・ド・モンテスキュー(「さかしま」のモデルになったディレッタント貴族)も演じていたが、ハマッていた。金森のデモーニッシュな役もよかった。
残念ながら、男性陣のなかでいちばんオーラが欠けていたのが主役の西島だった。彼はバレエのテクニックに問題があり(要するにヘタ)、もともと運動神経が鈍いが、希有なほどハンサムだし、スタイルもいいから、ミュージカルや芝居に進出するのはいいと思うが、ひょっとしたら(勝手な推測だが)あまり頭がよくないのかもしれない。彼の舞台を見ていると、ふとそんな気になる。