ガラ公演の出演順というのは、どうやって決めるのだろうか。もちろん芸術監督が決めるのだろうが、やはり新人は最初のほうで、大御所がトリを取るという、紅白歌合戦的な順にするのが普通なのだろうか。
それはともかく、まず「グラン・パ・クラシック」(厚木三杏/逸見智彦)。厚木三杏は大好きなバレリーナである。スタダンが存続できるようなら(かなり苦しいように見受ける)、彼女がプリマになるべき。逸見は、技術はともかく、立派なダンスール・ノーブルである(ちなみに、ダンスール・ノーブルはテクニックよりも見た目が重要である)。きょうの逸見はよく頑張っていた。厚木もよかったが、リハーサルが足りないように見受けた。
「ジゼル」(関本美奈/黄凱) ふつうより長く、幕切れまでやった。この二人は初めてみたが、とてもよい。ただ私は「ジゼル」第2幕のパ・ド・ドゥをガラ公演で見るのは好きでない。霊的な世界に、すぐには「入って」いけないからだ。
「ソリテイル」より(島添亮子・パトリック・アルモン)昨年だったか、小林紀子バレエ・シアターの公演でこの作品全体をみたときよりも、きょうのほうがずっといい。あまりの素晴らしさに、前の二つが吹っ飛んでしまった。
「眠れる森の美女」(島田衣子/バンジャマン・ペッシュ)ふたりとも素晴らしい。島田衣子はデビューのころから見ているが、文字通りの大器である。踊りのスケールが大きく、しかも優雅だ。かなり強そうなお姫様ではあるが。
「ライモンダ」(酒井はな/山本隆之)酒井はなも「大器」である。最近はめっきり貫禄がついてきた。堂々としている。私は彼女の大ファンで、彼女の踊りが好きだが、あのプロポーションも素晴らしい。最近、上野水香が脚光を浴びているが、ああいうのは一種の奇形、といってわるければ突然変異みたいなもので、日本人がああいう体型をしているなんて、本来はありえないことだ(和製ラカッラ)。むかし野坂昭如が吉永小百合について、西洋美女とは違う、日本人女性の最高美だといっていたが、それと同じように、酒井はなのプロポーションは日本人女性の理想的体型である。いっぽうの山本隆之は最近たいへんな人気だが、私はまだ不満。上半身が美しくない。実力のあるダンサーだから、もっとすごくなれるはず。
「アルカンジェロ」(秋山珠子/トーマス・クライン)舞台が暗くなって、レオタードの男女が出てきたとき、いやな予感がした。この手の作品はたいていつまらないんだもん。ところが、はじまってみると、体をうまく使っているし、流れるような美しい動きが続き、じつに官能的。プログラムをみると、なるほど、振付はナチョ・デュアトだ。師匠のキリアンの作風は幅広いが、デュアトもいろいろ違った作品をつくる人である。
「コッペリア」(アニッサ・クルベーロ・ガルシア/ローランド・サラビア・オケンド)これは、本日いちばん印象が薄かった。すみません。
「シェヘラザード」(下村由理恵/佐々木大)佐々木大がニジンスキーの踊った作品を踊るというのだから、興味をそそられないはずはない。日本では、キーロフ版(よくルジマトフとマハリナが踊っているもの)がよく知られているが、あれは誰が振り付けたのか、私は知らない。きょうの振付は篠原聖一。う〜ん、感心しない。キーロフ版のほうがずっと官能的だ。たしかにこの二人では、どろどろにエロティックという感じにはならないだろうけど、でも、この作品はセックスとサディズムの世界なんだから・・・
「ドン・キホーテ」(エレーナ・フィリピエワ/デニス・マトヴィエンコ)「世界のトップ・レベルの踊りを見せてあげましょう」という感じ。昔のマトヴィエンコは、フィリピエワの添え物みたいな感じだったが、その後の成長ぶりはめざましく、素晴らしいダンサーになった。フィリピエワもじつに安定している。ところで、マトヴィエンコはマリインスキーに引き抜かれたのに、1年でキエフに戻ってしまった。クビになったのかしら?
「カルメン」(草刈民代/イルギス・ガリムーリン)先日、イルギスと酒を飲みながら、「民代のカルメンはいいねえ」という話をしていたのだが、このアロンソ版のカルメンは草刈にとって最高の作品ではなかろうか。それにしても美しい。顔も、スタイルも。ただ、きょうはキエフの二人組を見た直後だったので、体の使い方が段違いであることがはっきりわかってしまった。最近ますます固くなってきたような気がするが・・・
「ロメオとジュリエット」(アリーナ・コジョカル/アンヘル・コレーラ)コジョカル、かわいい! 日本にきたら、超売れっ子アイドルになるんじゃなかろうか。踊りもじつにいい。どういうわけか、私はコレーラが出ることを忘れていて、「おお、この相手役、すごい。ロイヤルにこんなすごいダンサーがいるのか」と、感動しながら見てしまった。奇跡のように素晴らしいロメオであった。マクミランの振付は意外に単純で、やたらにピルエットが多い。コレーラにはもってこいの作品である。