データベースの目次へ

BALLETOMANIA
の目次へ 

『白鳥の湖』台本対照表

Copyright: Sho Suzuki


Translated by Sho Suzuki from A. Demidov: Lebedinoe ozero, Chef-d'oevre baleta, Iskusstvo, Moscow, 1985

引用は自由ですが、引用する際には(当たり前ですが)、出典を明記して下さい。


初版台本

1876年10月19日の「演劇新聞」に掲載されたもの。公演に際しては同じものが1200部発行された。著者はヴラジーミル・ベーギチェフとヴァシーリイ・ゲーリツェル。

チャイコフスキーが手書きの総譜に書き込んだメモ

蘇演版台本

1895年にペテルブルクで発行された台本。タイトルは『白鳥の湖/幻想的バレエ。全3幕4場』。著者はモデスト・チャイコフスキー。         

第1幕

第1幕

第1幕第1場

 物語の舞台はドイツ。第1幕の舞台は華麗な庭園で、奥に城が見える。小川があり、小さな美しい橋が架かっている。舞台では若き君主ジークフリード王子が成人式を祝っている。王子の友人たちが小さなテーブルに座ってワインを飲んでいる。村の若者たちと、もちろん村の娘たちが、王子にお祝いを述べるためにやってきて、ほろ酔い加減の老人ヴォルフガングの求めに応じて踊る。ヴォルフガングは王子の家庭教師である。王子は踊る若者たちにワインをふるまうが、ヴォルフガングは村の娘たちに言い寄り、彼女たちにリボンや花束を贈る。

 踊りは佳境に入る。使者が走ってきて王子に、王子の母である王妃が王子に話したいことがあり、じきにここにお出ましになるという。この知らせを聞いて、浮かれ騒いでいた一同は慌て、踊りは止み、村人たちは後ろに退き、召使いたちは急いでテーブルを片づけたり、酒瓶を隠したりで、大忙し。尊敬されるべき家庭教師は、自分が生徒に悪い見本を示していることを自覚し、仕事熱心であるふりをし、素面を装う。

 そこへ、王妃がお付きの者を引き連れてあらわれる。客人や村人たちはこぞって恭しくお辞儀をする。若き王子が王妃を出迎え、その後ろには酩酊して足元のおぼつかない家庭教師が続く。

 王妃は、息子の当惑ぶりを見て、私が来たのは、宴を台無しにして彼を困らせるためではなく、成人の祝いの日にこそ結婚について話し合わなくてはならないと考えたからだ、と説明する。王妃は続ける。「私はもう年です。だから私の目の黒いうちに結婚してもらいたいのです。結婚によってこの由緒ある家柄を汚すようなことがないのを見届けてから死にたいのです」。

 王子はまだ結婚する気がないので、母親の言葉を聞いてふくれるが、すぐに納得し、神妙な面もちで母に尋ねる――いったい誰を私の生涯の伴侶に選んだのですか、と。

「まだ誰と決めたわけではないのです」と母親は答える。「おまえに自分で選んでもらいたいからです。明日、大がかりな舞踏会を催し、貴族たちやそのお嬢さんがたが集まります。その中から自分の気に入った人を選びなさい。その人がおまえのお嫁さんになるのです」。ジークフリードは、事態はまだそれほど差し迫っているわけではないことを知り、こう答える。「母上のお言葉には絶対に背きません」

「言うべきことはそれだけです」と王妃は言う。「私は退散するとしましょう。気兼ねなしに思いきり楽しみなさい」

 王妃が行ってしまうと、友人たちが王子のまわりに集まる。王子は彼らにこの悲しい知らせを打ち明ける。「楽しかった時もこれで終わりだ。さらば、自由よ」

「まだまだ時間はあるじゃないか」と騎士ベンノが慰める。「今はまだ現在がぼくらに微笑みかけているんだから、将来のことはしばし忘れて、思いきり楽しもうじゃないか」

「君の言うとおりだ」と王子は笑いながら答える。

 どんちゃん騒ぎが再開する。村人たちはかたまったり離れたりしながら踊る。神妙にしていたヴォルフガングも、さらに杯を重ね、踊りに加わるが、戯けた滑稽な格好で踊るので、みんなは腹を抱えて笑う。踊り終えると、ヴォルフガングは村の娘たちを口説き始めるが、娘たちは笑いながら逃げる。彼はとくにお気に入りの娘に、愛を告白する前置きとしてキスしようとするが、娘は巧みにそれをかわす。バレエではよくあるように、彼は間違えて娘の恋人にキスしてしまう。ヴォルフガングはうろたえる。一同大笑い。

 だが夜の訪れは早く、あたりは暗くなってくる。客のひとりが杯をもって踊ろうと提案する。一同は喜んでその提案を実行する。遠くの空に白鳥の群が見える。

「でも、白鳥を見つけるのは難しいだろうな」と、白鳥を指さしながら、ベンノが王子をそそのかす。

「そんなことはないさ」と王子は答える。「絶対に見つけてみせる。弓を取ってくれ」

「そんなものは必要ないでしょう」とヴォルフガングが諌める。「行くには及びません。もうお休みになる時間です」

 王子は、なるほどその通りだと納得したふりをする。だが、老人が安心して立ち去るやいなや、召使いに弓をもってこさせ、ベンノといっしょに、白鳥の飛んでいった方角へと走り去る。

 舞台には華麗な庭園の一部が見え、舞台奥には城が見える。小さな美しい橋が小川に掛かっている。ジークフリード王子が友人たちとテーブルに座ってワインを飲んでいる。

 村人たちが王子にお祝いを述べるためにやってくる。王子の家庭教師ヴォルフガングは彼らに、踊りを踊って王子を楽しませるようにと命じる。王子は一同にワインをふるまうよう命じる。召使いたちがその命令を実行する。娘たちにはリボンや花束が配られる。

 使者が走ってきて、王子の母である王妃がいまにもお出ましになると告げる。召使いたちはあたりをすべて片づける。家庭教師は素面を装う。


 
 
 
 王妃の登場・・・

 王妃は息子の結婚について話す・・・


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 王妃、退場
王子は言う、「自由気ままな日々もこれで終わりだ・・・


 
 
 騎士のベンノが王子を慰める。


 
 
 
 一同ふたたび腰を下ろし、宴が再開する。

 家庭教師は酔っぱらって踊りだし、その下手な踊りで一同を笑わせる。

家庭教師はぐるぐる回って・・・倒れる。


 
 
 
あたりが暗くなってくる。客のひとりが、杯を手にもって最後の踊りを踊ろうと提案する。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
主題。空を一列になった白鳥が飛んでいく。

 ベンノとその仲間たちがジークフリード王子を待っている。彼の成人式を盛大に祝うためだ。ジークフリード王子、ヴォルフガングとともに登場。宴が始まる。村の若者や娘たちが王子にお祝いを述べるためにやってくる。王子は若者たちに自由に酒を飲むようにと言い、娘たちにはリボンを与える。ほろ酔い気分のヴォルフガングは、自分の生徒の命令がちゃんと実行されるよう気を使う。村人たちの踊り。


 召使いたちが走ってきて、王子の母である王妃の到来を告げる。この知らせを聞いて、浮かれ騒いでいた人びとは慌てる。踊りはやみ、召使いたちはあわててテーブルを片づけ、酒宴の痕跡を隠す。若者たちとヴォルフガングは素面のふりをする。従者たちに続いて、王妃が登場。ジークフリードは母親を出迎え、恭しく挨拶する。彼女は語る。「私の目をごまかそうとしても無駄ですよ、楽しく騒いでいることはちゃんと知っているんですから。私はお前がお友達と楽しくやっているのを邪魔するために来たのではありません。ただ次のことを言うために来たのです、今日はお前にとって独身最後の日で、明日は結婚しなければいけません」。王子は問い返す。「花嫁は誰です?」王妃は答える。「それは明日の舞踏会で決まること。お前の嫁、私の娘になるにふさわしい若い娘を残らず呼んでおきましたから。お前が自分でいちばん気に入った人を選ぶのです」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 中断した宴を再開させるため、王妃は退場する。

 王子は物思いにふける。自由で気ままな独身生活もこれで終わりかと思うと、悲しいのだ。ベンノが、将来の心配をしてこの楽しい現在を台無しにしてはいけないと諭す。ジークフリードは宴の再開を合図する。ふたたびお祝いと踊りが始まる。すっかり酔っぱらったヴォルフガングが踊りに加わり、一同を大いに笑わせる。


 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 夕闇が迫る。最後にもう一曲踊って、それでお開きだ。最後は杯をもった踊り。


 
 
 
 
 
 
 
 白鳥の群が上空を飛んでいく。若者たちはまだ眠くない。彼らは白鳥の群を見て、狩りで一日を締めくくろうと思いつく。ベンノは白鳥たちが夜どこへ飛んでいくかを知っている。泥酔したヴォルフガングを置き去りにして、ジークフリードと若者たちは出発する。

第2幕
第2幕

第1幕第2場

 山の中の荒涼とした場所。四方八方を森で囲まれている。舞台の奥に湖があり、その畔、客席から向かって右手に、崩れかかった礼拝堂のような建物がいくつかある。夜。月明かり。

 湖上を一群の白鳥が雛鳥を連れて泳いでいる。群は廃墟の方へと向かう。先頭の白鳥は頭に冠を載せている。

 王子とベンノが舞台に登場。疲れ切っている。ベンノが言う。「もうこれ以上歩けない。力が出ない。休まないか」

「そうだな」と王子は答える。「城からずいぶん遠くまで来てしまったようだ。ここで夜を明かすはめになるかもしれないな。おや、見ろよ」と言って、王子は湖を指さす。「白鳥たちの住みかはあそこだ。早く、弓を取ってくれ」

 ベンノは王子に弓をわたす。王子が狙いを定めるやいなや、白鳥たちは姿を消す。その瞬間、廃墟の内部がこの世ならぬ不思議な光で照らされる。

「飛んでいってしまった。残念! でも見ろよ、あれは何だ」王子はベンノに、光る廃墟を指し示す。

「不思議だ!」ベンノは驚いて言う。「ここは魔法にかけられているにちがいない」。

「行って調べてみよう」王子はそう言って廃墟の方へ行く。彼が廃墟に近づいたちょうどその瞬間、階段の上に、白いドレスを着て、宝石を散りばめた冠をかぶった娘があらわれる。月に照らされて光っている。

 ジークフリードとベンノはびっくりして廃墟から後ずさりする。娘は悲しそうに頭をふって王子に尋ねる。「どうして私を追い回すのです、高貴なおかた? 私があなたがたに何をしたというのですか」

 王子はしどろもどろに答える。「私はその・・・まさか・・・夢にも・・・」

 少女は階段を降りてきて、しずかに王子に歩み寄り、彼の肩に手をおいて、責めるように言う。「あなたがたが殺そうとした白鳥は私だったのですよ」

「あなたが? 白鳥? まさか!」

「いえ、そうなのです。聞いて下さい。私はオデットともうします。母は善良な妖精でしたが、自分の父親に逆らって、高貴な騎士と恋に落ち、結婚しました。でも父は母を痛めつけ、母は死んでしまいました。父は再婚し、私のことを忘れてしまいましたが、意地悪な継母はじつは魔女で、私を憎み、私はあやうくころされるところでした。でも祖父がかくまってくれました。祖父は母のことを心から愛していたので、母のことを思って泣き続け、その涙でこの湖ができたのです。祖父は湖のいちばん奥まで行って、私を世間の目から隠しました。でも最近は私を甘やかしてくれるようになり、自由に遊びに行かせてくれます。それで昼間は友だちといっしょに白鳥に姿を変えて、空高く、ほとんど天国に届くくらいまで楽しく飛び、夜はここ、祖父のいるそばで、遊んだり踊ったりするのです。でも継母は今でも、私や友だちをそっとしておいてはくれません」

 そのとき、フクロウの鳴き声がする。

「聞こえましたか。あれは継母の不吉な声です」とオデットは言い、用心深くあたりを見回す。「ほら、あそこにいます」

 廃墟の中に、眼の光る巨大なフクロウが姿をあらわす。

「私はずっと前に継母に殺されていたかもしれません」オデットは続ける。「でも祖父が彼女に眼を光らせ、私を守ってくれるのです。私が結婚すれば、もう魔女は私を傷つけることはできません。でもそれまでは、魔女の企みから私を守ってくれるのはこの冠だけです。私の話はこれでおしまいです」

「ああ、許して下さい。美しいおかた、許して下さい」王子は動揺して、ひざまずく。

 廃墟から、若い娘たちと子どもたちが走って出てくる。彼女たちは王子に詰め寄り、あなたはただの気晴らしのために私たちがいちばん大切にしているおかたをあやうく私たちから奪うところだったのだ、と食ってかかる。

 王子とその友人は頭をたれる。

「やめて」とオデットが言う。「もうじゅうぶんでしょう。このおかたは悪い人ではありません。悲しんでいらっしゃる。私に同情して下さっているわ」

 王子は弓をとって、すばやく折り、投げ捨てる。「これからはどんな鳥も絶対に殺しません。誓います」

「気楽になさってください。過ぎたことは忘れて、私たちといっしょに楽しみましょう」
 踊りが始まり、王子とベンノも加わる。白鳥たちはいっしょに踊ったり、一人ずつ踊ったりする。王子は終始オデットのそばから離れない。踊っているあいだに彼は狂おしいほどにオデットに恋し、この恋を斥けないでほしいと懇願する(パ・ダクシオン)。オデットは笑い、王子の言葉を真に受けない。

「ぼくを信じてくれないんですね、冷たい、残酷なオデット」

「あなたを信じるのが恐いんです、高貴なおかた、あなたは恋をしているという錯覚に陥っているだけかもしれません。明日、あなたのお母さまの舞踏会で、あなたは若くて美しい娘さんたちを大勢見て、きっと別の人が好きになり、私のことを忘れるでしょう」

「絶対にそんなことはありません。騎士の名誉にかけて誓います」

「では聞いて下さい。包み隠さず申します、あなたが好きです。私もあなたに恋してしまったのです。でも恐ろしい予感がします。あの魔女がその悪巧みによって、あなたに試練を課し、私たちの幸せを台無しにしてしまうような気がしてならないのです」

「世界全体を敵にまわしても、私は闘う。私は生涯あなただけを愛しつづけます。魔女の妖術をもってしても、私の幸せを壊すことはできない」

「わかりました。私たちの運命は明日決まるでしょう。二度と私の姿を見ることはないか、それとも私がこの冠をあなたの足元に置くことになるか。でも、いまはひとまずお別れ。あっという間に時間は過ぎ、もうすぐ夜明けです。さようなら、明日まで」

 オデットと友人たちは廃墟の中に消える。夜が明け、空が明るくなり、白鳥の群が泳いで湖に出ていき、その頭上を、巨大なフクロウが重々しく羽ばたきながら飛んでいる。

 湖の上を白鳥たちが泳いでいる。


 
 
 
 
 王子、登場。


 
 王子、白鳥に気づく。

 王子は白鳥を弓で射ようとするが、白鳥たちは姿を消す。


 
 
 
 
 
 
 
 オデット、登場。


 
 
 少女は王子に言う。「どうして私を追い回すのですか」・・・


 
 
 
 
 
 
 
 オデットの身の上話。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 フクロウが姿をあらわす。


 
 オデット「私が結婚すれば」・・・


 
 
 王子「私を許してください」・・・


 白鳥たちが一列になってあらわれる。


 
 
 オデット「もういい、おやめなさい、この人はいいおかたです」・・・


 王子は弓をへし折る。


 
 オデット「気をお楽にして下さい。高貴なお方」・・・


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 オデットと白鳥たちは廃墟の中に消える。

 岩だらけの荒涼とした場所。舞台の奥には湖。上手の岸には礼拝堂の廃墟。月明かり。

第1景

 白鳥の群が湖を泳いでいる。先頭の白鳥は頭に冠を載せている。


第2景

ベンノが友人たち(王子の従者たち)と登場、白鳥を見て、弓で射ようとするが、白鳥たちは泳いで行ってしまう。ベンノは仲間たちに、白鳥を見つけたことを王子に知らせるように命じ、ひとり舞台に残る。白鳥たちは美しい若い娘たちに姿を変え、ベンノを取り囲む。ベンノはこの不思議な現象にうろたえ、彼女たちの魅力の虜になる。王子に先立って、従者たちが戻ってくる。彼らがやってくると、白鳥たちはたじろぐ。若者たちは白鳥を射ようとする。王子が登場し、やはり弓で白鳥を狙うが、突然、廃墟が魔法の光に照らされ、オデットが姿をあらわし、慈悲を乞う。


 
 
 
 
 
 
 
 第3景

ジークフリードはその美しさに打たれ、仲間たちに射るなと命じる。オデットは王子に礼を言い、身の上話をするーー彼女、オデット姫と、彼女に仕える若い娘たちは不幸にも悪魔の犠牲となり、呪いをかけられてしまった。昼間は白鳥の姿に変えられ、夜の間だけ、この廃墟の近くで、人間の姿に戻ることができる。フクロウの姿をした主人が彼女たちを見張っている。誰かがオデットに恋し、生涯にわたる真実の愛を誓うまで、その恐ろしい呪いは解けない。これまで誰にも愛を誓ったことのない人だけがオデットの呪いを解き、もとの姿に戻すことができる。ジークフリードはうっとりとオデットの話に聞き入る。そのとき、フクロウが飛んできて、悪魔に姿を変え、廃墟にあらわれる。悪魔は二人の会話を聞いて、姿を消す。ジークフリードは、白鳥の姿をしたオデットを自分はあやうく殺すところだったのだと考えてぞっとする。彼は弓をへし折り、憤然として投げ捨てる。オデットは王子を慰める。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第4景

オデットは友人たちを呼び、踊りで王子の気を引き立てようとする。ジークフリードはますますオデット姫の美しさに魅了され、私があなたを救おうと申し出る。自分はこれまで誰にも愛を誓ったことがないから、あなたをフクロウの魔法から解放することができるかもしれない。フクロウを殺して、あなたを助けよう、と。オデットは、それは不可能だと答える。誰かがオデットに夢中になって彼女のために自分の命を犠牲にしたとき、はじめて悪魔は死ぬのだ。ジークフリードは、その覚悟はできている、あなたのためなら喜んで死のう、と答える。オデットは王子の愛を信じ、彼がこれまでに誰にも愛を誓ったことがないということも信じるが、明日、王妃の宮廷には大勢の美しい娘たちがやってきて、王子はその中の一人を自分の花嫁に選ぶことになるだろう。ジークフリードは、オデットが舞踏会に来てくれたらかならずあなたと結婚すると答える。不幸なオデットは、それはできない、その時間には私は白鳥の姿で宮殿のまわりを飛び回ることしかできない、と答える。王子は、けっしてあなたを裏切らないと誓う。オデットは若者の愛に打たれ、その誓いを受け入れるが、こう警告する ーー悪魔はあらゆる手段を用いて、あなたが他の女性に愛を誓うように仕向けるでしょう、と。それでもジークフリードは、どんな魔法でも自分からオデットを奪うことはできないと約束する。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第5景

 夜が明ける。オデットは恋人に別れを告げ、友人たちといっしょに廃墟の中に姿を消す。空が明るくなってくる。湖上をふたたび白鳥の群が泳ぎ出し、その上空を、巨大なフクロウが重々しく羽ばたきながら飛び回る。

第3幕 第3幕 第2幕

 王妃の城の壮麗な大広間。宴の準備が整っている。

 ヴォルフガング老人が召使いたちに最後の仕上げを命じている。式典長が客たちを出迎え、席へ案内する。式部官が進み出て、王妃と王子の到着を告げる。王妃と王子が、廷臣、小姓、こびとたちを引き連れて登場。愛想よく客人たちとお辞儀を交わし、彼らのために用意された上座に着席する。式典長は王妃の合図に応えて、踊りを始めるよう命じる。客の男女は種々のグループをつくり、こびとが踊る。トランペットが新たな客人の到来を告げる。

 式典長が出迎えにいき、式部官が彼らの名前を王妃に告げる。年とった伯爵が妻と娘をともなって登場、王妃と王子に恭しくお辞儀をする。娘は王妃に促され、踊りに加わる。ふたたびトランペットがなり、式典長と式部官はふたたび務めを遂行する。次々に新しい客が到着する。式典長は老人たちを席に案内し、娘たちは王妃に勧められて踊りに加わる。そうしたことが数回繰り返された後、王妃は息子を部屋の隅に呼んで、どの娘が気に入ったかと尋ねる。

 王子は憂い顔で答える。「これまでのところ、ひとりも気に入りません、母上」

 王妃は憤慨して肩をすくめ、ヴォルフガングを呼び、怒りながら王子の言葉を伝える。家庭教師は王子に言葉をかけようとするが、そのときトランペットがふたたび鳴り、フォン・ロットバルトが娘のオディールを連れて登場する。王子はオディールの美しさに打たれる。彼女の顔は王子に白鳥のオデットを思い出させる。彼はベンノを呼んで尋ねる。「彼女、オデットに似てないか」

「ぼくは全然似ているとは思わないが・・・きっと王子は誰を見てもオデットに見えるんじゃないか」

 しばらくの間、王子は踊っているオディールをうっとり眺めているが、やがて自分も踊りに加わる。王妃は喜んで、ヴォルフガングを呼び、息子はこの客が気に入ったようだが? と尋ねる。

「そのようですな」とヴォルフガングは言う。「もう少しお待ち下さい。王子さまだって石ではありません。じきに恋に落ちるでありましょう」

 その間、踊りは続き、王子は、彼の目の前でコケティッシュな身ぶりを見せつけるオディールに対する好意を、あからさまに顔に表す。王子は情熱に駆られてオディールの手に接吻する。その瞬間、王妃とロットバルト老人が立ち上がって、舞台中央の踊りの群に歩み寄る。

「息子よ、妻に迎える女性の手にしか接吻してはいけません」

「母上、ぼくはこのかたに求婚するつもりです」

「そのかたの父君はなんとおっしゃるでしょう」

 フォン・ロットバルトは勝ち誇ったように娘の手をとり、その手を王子にあたえる。

 突然、舞台が暗くなり、フクロウの鳴き声が響きわたり、ロットバルトの服が脱げ落ち、悪魔の姿になる。オディールが高笑いする。窓が音をたてて開き、頭に冠を載せた白鳥の姿が見える。王子は恐れおののき、婚約者の手をふりほどき、胸に手を押しあてて、城を飛び出していく。

 ヴォルフガング老人が召使いたちに指示を与えている。客が到着。
王子と王妃が、お供の一行、小姓、こびとなどを引き連れて登場。
式典長が踊りの開始を合図する。
こびとたちの踊り。

 トランペットが鳴り、新たな客の到来を告げる。式典長が出迎え、式部官が王妃に客の名前を告げる。年とった伯爵が妻と娘をともなって登場。王子と王妃にお辞儀をし、娘は騎士のひとりとワルツを踊る。

 ふたたびトランペットが鳴り、客がやってくる。老人たちは席につき、娘たちは客に誘われてワルツを踊る。
ふたたび同じ光景(第17曲第120小節)。(第148小節で)全員によるワルツ。(第184小節で)コール・ド・バレエ全員によるワルツ。王妃は息子を脇へ連れていって、どの娘が気に入ったかと尋ねる。

 ロットバルト男爵と娘オディールの登場。

 王子はオディールがオデットそっくりなので驚き、そのことをベンノに尋ねる。

 王妃は、オディールが王子の気に入ったのに喜んで、それについてヴォルフガングに尋ねる。

 王子、オディールをワルツに誘う。

 王子、オディールの手に接吻。

 王妃とロットバルトが中央に出る。

 王妃が、(接吻したということは)オディールを嫁に迎えるということですね、と言う。

 ロットバルトは勝ち誇ったように娘の手をとって、王子に与える。
ふいに舞台が暗くなる。

 豪華絢爛な大広間。宴会の準備が整っている。

第1景

 式典長が召使いたちに最後の細かな指示を与えている。彼は次々に到来する客を出迎え、席に案内する。廷臣たちを引き連れて、王妃とジークフリードが登場する。花嫁とその父親の行列。みんなで踊る。花嫁候補のワルツ。

第2景

 王妃は息子に、どの娘が気に入ったかと尋ねる。王子は答えるーーどの娘も好ましいが、永遠の愛を誓えるような女性は見あたらない、と。

第3景

 トランペットが新たな客の到来を告げる。フォン・ロットバルトが娘のオディールを連れて到来。オディールがオデットそっくりなので、王子は仰天し、大喜びで彼女を出迎える。白鳥の姿をしたオデットが窓に姿をあらわし、悪魔の魔法に用心するよう警告する。だが、この新しい客の美しさの虜になった王子は、彼女以外にはないも見えないし、何も聞こえない。ふたたび踊りが始まる。

第4景

 ジークフリードは決断する。オディールとオデットは同一なのだと確信し、オディールを花嫁に選ぶ。フォン・ロットバルトは勝ち誇ったように、娘の手をとって王子の手に重ねる。王子はみんなが見ている前で永遠の愛を誓う。

 そのとき、窓のオデットの姿が王子の目にとまる。彼は騙されたことに気づくが、もう遅い。すでに誓ってしまったのだ。ロットバルトとオディールは姿を消す。オデットは永遠に悪魔のいうなりにならなければならない。悪魔はフクロウの姿で、窓の、オデットの上の方に姿をあらわす。ジークフリードは絶望して走り去る。一同は混乱する。

第4幕 第4幕 第3幕

 場面は第2幕と同じ。夜。
友人たちがオデットの帰りを待っている。一体どこへ行ってしまったのかと心配している者もいる。一同はオデットがいないので淋しく、自分たちで踊ったり、子どもたちを踊らせたりして、気分を盛り上げようとする。

 そこへオデットが走って帰ってくる。冠の下の髪は乱れ、肩に垂れかかっている。彼女は絶望し、泣いている。友人たちがオデットに駆け寄り、尋ねる。「いったい何があったのですか?」

「あの人が誓いを破ったの。試練を切り抜けることができなかった」

 友人たちは憤り、自分を裏切った男のことなんか忘れて下さいと言う。

「でも私はあの人を愛している」オデットは悲しそうに言う。

「かわいそうに。かわいそうに。急いで飛び去りましょう。あの男がやってくるわ」

「あの人が?」オデットは驚いて、廃墟のほうに走っていくが、ふいに立ち止まる。「もう一度だけあの人に会いたい」

「でもそんなことをしたら、ご自分の身を滅ぼすことになります」

「いいえ、だいじょうぶ、気をつけるから。さあ、みんな行って。私を待っていて」

 みんなは廃墟の中に入っていく。雷鳴が聞こえる。最初は遠くから散発的に聞こえるだけだが、しだいに近づいてくる。雲が集まってきて舞台は暗くなり、時おり稲妻が雲を照らし出す。湖の水面が荒れる。

 王子が走って登場。

「オデット、やっと見つけた!」王子は言って、オデットに駆け寄る。「ああ、許して下さい。許して下さい、愛しいオデット」

「私にはもうあなたを許す力はありません。すべては終わったのです。お目にかかるのはこれが最後です」

 王子はオデットに必死にとりすがるが、オデットは受け付けない。彼女は激しく波立つ湖のほうをおずおずとうかがい、王子の腕をふりほどき、廃墟に向かって走る。王子は追いかけ、彼女をつかまえ、必死に訴える。「行ってはいけない。あなたが望もうと望むまいと、あなたは永遠にぼくのものだ!」

 彼はすばやくオデットの頭から冠をとり、荒れ狂う湖に放り込む。すでに岸から水が溢れている。オデットの頭上をフクロウが飛び、叫び声をあげ、王子が投げた冠を爪でひっつかんで飛び去る。

「なんということをしたのです。あなたは私たちふたりの身を滅ぼしてしまった。私は死にます」と言って、オデットは王子の腕の中に倒れ込む。雷鳴の響きと波の轟音の中に、最後の悲しい白鳥の歌が聞こえる。

 波が次から次へと王子とオデットにかかり、二人はじきに水中に消えていく。

 嵐が静まる。遠くから雷の音がかすかに聞こえる。散り散りになった嵐雲の間から月の青白い光が注いでいる。湖の静かな水面に白鳥の群があらわれる。

]

 オデットの友人たちが、オデットはどこへ行ってしまったのかと心配している。

 白鳥の娘たちが子どもたちに踊りを教えている。

 オデットが走ってきて、友人たちに悲しい知らせを告げる。

「あのかたがいらしたわ」と友人たちがオデットに教える。

 舞台が暗くなり、嵐が起き、雷鳴がとどろく。

 王子が走ってくる。
「許してください」と王子が言う。最後の場面。

 オデット、王子の腕の中に倒れ込む。

 湖面に白鳥たちが姿をあらわす。

 白鳥湖の近くのひとけのない場所。遠くに魔法の廃墟が見える。断崖。夜。

第1景

娘の姿に戻った白鳥たちが心配そうにオデットの帰りを待っている。不安で落ち着かないので、時間つぶしに、踊りを踊って気を紛らそうとする。

第2景

 オデットが走ってくる。白鳥たちは喜んで彼女を迎えるが、ジークフリードの裏切りを知ると、彼女たちも絶望する。すべては終わった。悪魔が勝ち、不幸なオデットは永遠に自由の身にはなれない。彼女は永遠に呪いの奴隷でいつづけるのだ。ジークフリードなしで生きるよりは、いま、人間の姿でいるうちに湖に飛び込んで死んでしまった方がましだ。友人たちが慰めるが、オデットは耳を貸さない。

第3景

 ジークフリードが飛び込んできて、オデットを探す。オデットの足元にひれ伏して、意図していなかった裏切りの許しを乞うためだ。自分が愛しているのはオデットだけだ、オディールに忠誠を誓ったのは彼女がオデットだと思ったからだ。オデットは恋人の姿を見ると悲しみを忘れ、二人は再会の喜びに浸る。

第4景

 邪悪な精霊があらわれ、束の間の幸せを邪魔する。ジークフリードは誓いを守り、オディールと結婚しなければならない。オデットは夜明けとともに白鳥の姿に変わり、二度と人間には戻れない。時間があるうちに死んだ方がましだ。ジークフリードはオデットといっしょに死ぬことを誓う。悪魔は恐怖に駆られて姿を消す。オデットへの愛による死は彼を滅ぼすのだ。オデットは最後にもう一度ジークフリードを抱きしめ、湖に身を投げるため、断崖に駆け寄る。悪魔はフクロウに姿を変えて、オデットの上を飛び回り、彼女を白鳥に変えようとする。ジークフリードはオデットに駆け寄り、彼女といっしょに湖に身を投げる。フクロウは落ちて死ぬ。

 アポテオーズ


データベースの目次へ

BALLETOMANIAの目次へ